いち麦

リバティ・バランスを射った男のいち麦のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

公開当時はジョン・ウェインとジェームズ・スチュワートの競演が話題になったんだろうな。S.スピルバーグ監督の「フェイブルマンズ」に引用されていて気になったので鑑賞。なるほどエンタメ性もある上にアメリカに向けられた社会的なテーマもあって今見ても充分見応えのある作品だった。
ならず者を成敗するのは銃か法か?銃の威力が罷り通る銃社会アメリカは真の法治国家へと変われるのか?…と大きく問いかけている作品のように感じた。法と秩序を力説するランスが結局は拳銃を使うようになるし最後の決着もトムの銃弾に依るのならば、当時のアメリカでは依然として法の裁きよりも銃の脅威が勝っているのだと物語っているようで虚しく思えなくもない。だが、やがて社会的地位を高めたランスとその後の哀れな姿の屍を晒すトムの対比を見るとそう単純に判断もできず、その後のアメリカ社会の成熟を象徴しているかのようで奥が深い。取り巻く警官や新聞記者の無力さを、誇張したキャラクターで見せているのも面白かった。

余談だが、映画評論家の町山智浩氏がツイッターで「スピルバーグは『フェイブルマンズ』で「メディアは嘘をつく」というテーマの『リバティ・バランスを射った男』を引用しながら、自分が映画で嘘をつく達人であることを描きました。」と仰っていたが、少なくとも自分にはこの映画「リバティ・バランスを射った男」が“メディアは嘘をつく”を本テーマにしたものだとは受け止められなかった。
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