名作。父親からの愛を切望する息子の葛藤や、彼らの周囲の人間模様を描いた作品。
アブラがキャルを「野良猫」と称していたのには納得がいく。家にも帰らず、あてもなく身一つで彷徨う彼の飄々とした雰囲気。いかにジェームズ・ディーンが役作りにこだわりを持っていたかが伺える。
それにアブラの美しさたるや。初めは「良いお姉さん」という印象だったのだが、次第に「少女のような愛らしさ」「艶めかしい優しさ」も垣間見ることができた気がした。家族に触れていく中で、彼女の気持ちの移ろいが手に取るようにわかる。とりわけ遊園地の時からキャルとの近くなる距離に、次第に婚約相手のアロンに嘘をつけなくなってくるアブラの表情も秀逸。
「正しさ」の正しさとは何なのか。
兄アロンのように、清廉潔白に生き、まっすぐな性格が故に自身の首を絞めることもある。彼が崩壊する瞬間、窓ガラスを割って爆笑する表情は、まさに「もう”正しさ”を負ってがんじがらめになる必要はないのだ」という解放感と、言葉にならない叫びに溢れていた。
父アダムは、自らの知らぬうちに聖書に書かれるような「正しさ」を息子たちに押し付け、それ故、過去には妻に恨まれ反抗された。息子には文字に起こせるような父自身が信じる「正しさ」を説き、次男キャルの屈折した愛されたい気持ちに気付くことができない。さらにアダムは、アダム自身が信じる「正しさ」によってがんじがらめになり、自由な弟キャルを妬む長男アロンの気持ちを汲み取ることができなかった。
ラストのシーンでは、あれほど相容れることができなかったアダムとキャルが、小さな共通点からお互いの信頼関係を認識していく。キャルがアダムを看病する立場の逆転のようにも見えるが、父の口元に耳を当てるあのキャルの表情には何だかたまらない感情が押し寄せる。
「人間は動物と違がって道を選べるんですね」というキャルの言葉が、今も私の耳に残っている。