柏エシディシ

エグザイル/絆の柏エシディシのレビュー・感想・評価

エグザイル/絆(2006年製作の映画)
5.0
「ジョニー・トー漢の絆セレクション」にて。
円盤も持っていて飽きる事なく何度も観た一本ながら、この度初めての劇場鑑賞。
自分の人生の10本には入ってくるであろう特別な映画と改めて確信。大好きな一本。

マカオの閑静なアパートメント。
幼子を抱える女の元に、それぞれ堅気には見えない男2人が、それも別々に2組訪れるところから映画がはじまる。「ウーはいるか?」
どうやら片方はウーを殺しに、片方はウーを守りに来たらしい。
やがて家財道具を軽トラ一杯に積んで帰ってきたウーを巻き込み、初めは静かに、やかで激しく銃撃戦がはじまるが、幼子の鳴き声を合図に双方一時休戦。
やおら、アパートメントの修理をはじめ、共に食卓を囲む。
どうやら男たちは、旧知の仲らしい…

先ずは導入からして、ロケーションから演出まで、全てが完璧で素晴らしい。
これから何が始まるんだ?というサスペンスに、説明的な台詞を拝しながらも、登場人物たちの設定やキャラクターを一気に観客に判らせる巧みさで、物語に引き込んでしまう。
そこからは、この男たちと共に、観客は何処へ行くともしれないexile漂流に身を任せる事になる。
先の読めない展開は当然の事で、この映画は香港映画の流儀に従い、殆どが即興で演出、脚色されているからだ。
しかし、そこにジョニートーに宿るメルヴィルやペキンパーという映画の神々の導きで、奇跡的に本作の独特な様式美を、物語を支えていく。
プロットの骨子はある意味定石なのだが、アクションの見せ方や演出のユニークさ斬新さは20年近く経った今なお色褪せず、特に闇医者の診療所のシークエンス、潜伏からの逃亡の一連のシーンの緊張感と面白さは今回も格別だった。

傑作「ザ・ミッション非常の掟」から続投の主演4人をはじめ、トーの常連組の俳優陣もいずれも見事な演技で参ってしまう。
脂ぎった怪演が最高なサイモン・ヤムは、本作のお陰で他作で見ても何だか怖いんだよなw
あと、映画館での鑑賞で改めて感じたのは音楽の素晴らしさ。
一級品のノワールでウェスタンである本作の雰囲気を上品に支えていると思う。
柏エシディシ

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