三樹夫

コブラの三樹夫のレビュー・感想・評価

コブラ(1986年製作の映画)
3.8
この作品はスタローン版ダーティハリーをやりたかったのは間違いない。サソリの人とか出てるし、ゴンザレス役の人もダーティハリー出演者なのをみるとわかる。後、脚本も担当しているスタローンが極悪人にも人権が必要なんですかねぇということを投げかけたかったんだろう。これ観てどんな人間にも人権は必要なのかと思案する人間がどれだけいるかは疑問だが。

色々と異様な映画で、グラサンにマッチ咥えて、拳銃にコブラのマーク、名前はコブレッティ、この時点でお腹いっぱい。家に帰れば冷蔵庫に放り込んでたピザ取り出してハサミで切っておもむろに食べだす始末。卵パックに銃のメンテナンスキット入れてるのも異様ポイントを次々と上乗せしていく。でも本人は健康志向で、頼んでもないのに健康アドバイスをしてくるが、一体どういったつもりでこんなキャラ設定なのかは全くわからん。スタローンの、俺みたいなマッチョな男が健康志向なキャラやるというギャップのギャグなのだろうか?ジョークもセリフの中に散りばめられているが、ほぼ意味不明。
浮き輪が必要だな、フライドポテトがケチャップで溺れている←⁉
ガソリンぶっかけ→お前には黙秘権がある→火だるま←⁉
俺の脳ではギャグとして理解できたのが、次は男らしい名前にしたいな→どんな?→アリス(スタローンの微笑)ぐらい。80年代は異常な時代だったとしか言いようがない。『コブラ』は照れなど一切なく考えられる限りのカッコよさをぶち込んだのだろうか。その結果ダサいなんてもんはとっくに通り過ぎて異様という極地へ着地している。ラスボスの倒し方も、もはやレザーフェイスみたいな異常者の殺し方だったし。
おそらく今回で4回目ぐらいの鑑賞だったが、レーザーポインタ当てたラスボスに、てめぇに俺を撃てるわけはねぇぜって言われてたけど、冒頭のスーパー立て籠もりのおっさん撃ってたし、コブラは普通に撃つだろと思った。スーパー立て籠もりのおっさんは今にも人質を殺しそうって緊急避難的な事情もあったのかもしれないけど、撃つか撃たないかで引っ張ることは冒頭のスーパーのシーンがある以上無意味になってるというのに今更やっと気付いた。

今作ではカルト宗教が敵。特に意味を見出すわけではなく、たくさんワラワラ沸いてきて銃ぶっ放して次々殺していくというのと、異常な奴が敵というそれぐらいのもん。警察の中にもカルト宗教の信者がいてというのは、NTT関連会社の中にオウム信者がいてNTTからデータ持ち出したというのが実際にあったことを思い出すが、あくまで思い出すだけ。
監督はジョージ・P・コスマトスという、『カサンドラ・クロス 』、『ランボー/怒りの脱出 』、『リバイアサン 』などをフィルモグラフィーに持ち、息子は『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』の監督のパノス・コスマトスという、こんなの『コブラ』を撮るために生まれてきたようなもん。良く言えばMTV感覚みたいな演出が取り入れられ、ブリジット・ニールセンの写真撮影のシーンはもはや笑う。体感で80年代のペラペラな商業ロックが一曲丸々流れてたぐらいの長さを感じたのと、あの水着は何?衣装部が狂ってたのかな。
ささきいさお版の吹き替えで翻訳を担当しているのは平田勝茂先生で、セリフ回しがゴキゲン。パンチワードこそ少ないが、会話のドライブ感といい平田勝茂名翻訳作品の一つ。
お前の態度は問題がある→ちょっとだけです、は上司につめられた時に言ってみたい。
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