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ケマダの戦いのbirichinaのレビュー・感想・評価

ケマダの戦い(1969年製作の映画)
4.0
時期的には「ラスト タンゴ…」の少し前の作品と思うが、「ラスト」のようなくたびれた中年男ではなくシブい40代のマーロン ブランドを堪能できた。金髪に染めて(?)ふてぶてしい一匹狼的な英国の工作員を演じている。
砂糖貿易が富をもたらしていた当時、サトウキビを産出するポルトガルの植民地ケマダ島を奪うのが彼の任務。そのために奴隷を焚きつけ革命を起こす。
ブランドの細かな心情の演技が素晴らしい。わざとらしさを感じさせず、それでいて印象に残った。
ラストのほうで目が青く見えるシーンが一か所あるが、わざとなのだろうか、気になる。
イタリア語版で声が吹き替えだったが、その声もふてぶてしさが出ていてとても合っていた。(声優の巨匠的な人が担当している)。

だだ、役の上での小道具なのだが、ウィスキーの入った水筒をいつも斜めがけしているのは少し妙だった。

ブランドによって革命のリーダーに仕立てあげられる黒人奴隷役は俳優ではなく監督か誰かが見つけてきた人だが、リアル感ある演技で、ブランドとからむシーンは見応えあった。
コロンビアの島で地元民たちを巻き込んでの撮影、エンニオ モリコーネの音楽などなどスペクタクルな作品。
「若者のすべて」のドロンの兄役のレナート サルヴァトーレが顔を黒く塗って(ハーフ役なので)不甲斐ない大統領を演じているのも見もの。

以前見た英語吹き替え版は、黒人ホセが革命のリーダーになることを暗示しているシーンがカットされていた。そのシーンは、水の入った甕(壺?)を運んでいたホセが、ブランドに向かって「旦那、この水がラム酒だったら、どう思う?」と話しかけるシーン。キリストが結婚式で客に出すワインが終わってしまったカップルを救うために水をワインに変えた逸話を想起させ、ホセが奴隷たちを救う英雄になることをほのめかしている。なぜカットしてしまったのか??
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