巴

月に囚われた男の巴のネタバレレビュー・内容・結末

月に囚われた男(2009年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

よく考えると疑問が残るところや回収されない伏線はあるのだけど、じわじわ来る怖さややるせなさはすごくよかった。クローンたちは、元々3年間しか保たないように作られているんだな。じゃあ、地球に帰って告発したクローンも、基地に残ったクローンも、眠ったままのクローンも……。でも、真実を知って戦ったふたりによって、もう同じ運命をたどる彼らは生まれない。SFスリラーという紹介だったけど、ヒューマニズムな作品でもあると思う。ロボットのガーティが、企業の意図に反してサムを助けてくれたのは、そういうふうにプログラムされているから、だと私は解釈した。人間的な感情が芽生えたとするよりは納得できる。自分たちの都合の良いように作ったはずのものに、結果的に反逆されて破滅する、という皮肉を感じた。
ほとんど一人芝居だっただろうサム・ロックウェルの演技はすごかった。目覚めてすぐの、身体のコントロールができていない動きは感覚に訴えてくるし、急速に弱っていく様子は恐ろしいほど。真実を知ったときのけして大袈裟でない感情表現に胸が詰まる。辛いのであまり何度も見たくはないが、名優の仕事ぶりだなあと改めて思った。
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