明石です

グレムリン2/新種誕生の明石ですのレビュー・感想・評価

グレムリン2/新種誕生(1990年製作の映画)
4.3
初代『グレムリン』から6年、続編嫌いで有名なジョー・ダンテ監督が、ワーナー・ブラザーズ(と一説によると製作指揮官のスピルパーグにも)にしつこく続編制作を頼まれ、やりたい放題やっていいなら、という条件のもと引き受けた結果、監督のオタク精神と溢れんばかりの遊び心が炸裂した、メタとパロディが盛りだくさんの怪作になってしまった!…という映画笑。

前作から見事キャリアアップを果たし、NYの高層ビルで勤務することになった主人公が、幸運なことにギズモと再会。しかし、ちょっと目を離した隙に、またしても水を浴びしまいグレムリンが増殖!運悪くそのビルのテナントには遺伝子操作の科学研究室が入っていて笑、そこへ忍び込んだグレムリンが、変テコな生命体と融合。蜘蛛になったり羽がついて空を飛んだりと、次々に新種が誕生してしまう。またビル内にはTV局も入っていて笑、スタジオを乗っ取ったグレムリンが料理番組に殴り込んだり、討論番組に出演し自分達の存在意義を主張したりと、本当にやりたい放題笑。

今作は『スクワーム』や『溶解人間』を生んだ特殊メイクアーティスト(界の巨匠)リック・ベイカーが参加していて、意匠を凝らした新種グレムリンのバラエティが非常に豊か。セメントを浴びた羽根付きのグレムリンが、ビルの端っこに不時着してガーゴイル像になったり(グレムリンなのに笑)、ホルモン剤を飲んで性別が変わり、人間の男と結婚してしまったり。あと特殊メイク関係ないけど、研究室の塩酸の瓶のラベルに「顔にかけないこと!」と注意書きがしてあったり、アイデア溢れるネタの数々に笑いながら見れた。

それから謎の薬を飲んでアタマが良くなったグレムリンが、TV討論に出、グレムリン界を代表して喋ったり、初代『グレムリン』を酷評する批評家をぶん殴って「グレムリンは傑作です!」と言わせたり笑、ラストは皆で集まってニューヨーク・ニューヨークを歌ったりと、最初から最後までぶっ飛んだ展開の連続。また、映画の途中でグレムリンの悪ふざけが過ぎてしまい上映が中断。観客席にいた大男が「さっさと続きをやれ!」と怒り、映画が再開するというメタ過ぎる(けれども全然わざとらしさのない)展開もある笑。

他にも、主人公サイドの男を椅子に縛り付けて、歯科医用のドリルで拷問する『マラソンマン』のパロディがあり、ビル内のアナウンスで「本日は『カサブランカ』のハッピーエンド版を上映します」と放送させたり(すごい皮肉だ笑)と、ダンテ監督の趣味の目白押し。この人のパロディは、徹底したオリジナル愛が感じられるから見ていてとても気持ち良いのです。メタ要素全開なネタにも、(例えば『スクリーム』とかがやってしまったような)こういうのが斬新なんでしょ?という感じで斜に構えた、なんなら観客の知性を馬鹿にしてるような雰囲気が全然ないのも素晴らしい。

それにしても、こんなに面白いのに「2」で潔く終わってるの、何気にけっこう凄いことだと思う。ハリウッドメジャーの製作にしては往生際が良いというかなんというか。でもその、もうやり残したことはない!と言わんばかりの出し切った感が本作の魅力だと思うので、続編は絶対に作らないという姿勢が奏功してるのは間違いないと思う。こんな怪作を企画から編集までやり通したダンテ監督にも、これにゴーサインを出したワーナーにもどちらも感謝ですね。傑作でした!!
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