歩く肉

1984の歩く肉のレビュー・感想・評価

1984(1984年製作の映画)
4.8
学生の頃に原作を読んだ時、体制に反抗する手段として、性愛に走る主人公たちの起こす行動の小ささが、当時の自分には馬鹿馬鹿しく感じたし、うまく因果性を見出せず、イマイチ響かなかった。反抗したいならもっと何か劇的なことを成し遂げなければ、と思ってた。でも、今だから理解できるのは、誰でも立派な革命家になりたいわけではないということ。そして、自分の意志を持った、ひとりの人間として生きていたい、という欲求とはどんなものなのか。
「生きることが大事じゃなく、人間であり続けることが大事だ」っていう台詞に凝縮している。

とにかくシャープな映像がカッコ良くて、ディストピアな世界観をよく表せていた。

後半の拷問シーンは、画として動きや変化がなすぎて、映画としてどうなんだろうとは思ったけど、ヴィジュアライズされて見えてくる痛みがあったし、諄いくらいに、2+2の答えを押し問答する場面も、文字を追うだけでは伝わらない切実みがあった。不必要に奇を衒ったり、感情を煽ったりせずに、淡々と撮ることに意味がある。

観ていて苦しくなるけど、大切にしたい映画。
歩く肉

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