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最強のふたりのNMのレビュー・感想・評価

最強のふたり(2011年製作の映画)
3.5
みんなが最高だとお薦めする映画。実際最高。
実話がモデル。細部は脚色。フランス制作。
障害や友情や他人への尊敬などのメインテーマの他にもさまざまに見どころがある。

富豪のフィリップは首から下がすべて不自由。
その介護の面接に来たド素人ドリスが採用された……。

ドリスがフィリップを全く障がい者扱いしていないのが素晴らしい。むしろ食って掛かり、全力でからかう。子どものように、これはどうなの、なんで?、と無遠慮に聞く。ただ友達のように接する。
はじめは不機嫌になったりしていたが、慣れるとフィリップに対し満面の笑み。愛情が溢れている。

私は障害について最低限の知識を持つとか直球でプライベートを聞かないとかいうことが差別しないということだと思っていたが、それだけが重要なことではないと学べた。
もっと大事なことがあるが、それを言語化するのは難しいのでぜひ作品を観て欲しい。

ドリスはビジネスで成功したものの障害を負い、もちろんそれ自体に苦悩し常に奇異の目を向けられてきた。そして最愛の妻を亡くしていることが彼の人生の様々なことにブレーキを掛けさせている。
フィリップが一番の障害と呼ぶものは、人にとって障害がなにか再考させられる。障害には障害自体よりも辛いことが自動的についてくるらしい。障害は治らないのに他のものを克服するというのは相当難しいことに違いない(もちろん障がい者全員かわいそうなどという意味ではなく)。

ドリスもフィリップも完璧な人間ではない。
ドリスは家庭が複雑で育ての母を落胆させ家を追い出された。
フィリップも達観しているように見えて障害に重く硬いコンプレックスがある。

しかしフィリップはドリスといるとゆっくりと希望を取り戻し、ドリスはフィリップと過ごして知性や責任を身に着けた。

フィリップはドリスの今後の人生を考え、あまり長時間拘束しては彼のためにならないと考えたのだろう。本当なら死ぬまで一緒にいたかったはずだ。真の友情。

ドリスがいなくなると、フィリップの人生を絶望が満たすのが分かり悲しい。
後任の人は別に悪い人じゃないし普通。世間ではこのぐらいの人が来てくれれば十分と考えるだろう。でもドリスの魅力には叶わない。フィリップはつまらない毎日を耐えようとしたがあまりにも辛かった。
介護者二人の違いの一つは、障がい者扱いするかしないか。生活を介助することと、その存在で人生まで支えてくれること。

しかしドリスの計らいで、別々でも生きていけるように。
全ての人にこんな奇跡が起きたらどんなにいいだろう。

介護を綺麗に描きすぎかもしれない。結局トイレについては引き受けたことは分かるが描かれていない。きっと実際にはこんなにスムーズにはいかないだろう。

ドリス役オマール・シーの笑顔が常に素晴らしい。笑顔だけで人を幸せにできそう。
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