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やがて来たる者へのbirichinaのネタバレレビュー・内容・結末

やがて来たる者へ(2009年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

第二次大戦末期にドイツ軍に皆殺し(strage)にされた村の実話から発想を得た物語。大戦末期までイタリアの友好国だったドイツの軍隊はイタリア国内あちこちに駐屯していた。しかしイタリアが連合軍と手を結んだ日、急に敵国になってしまう。南から進攻してくる連合軍に対し、ドイツ軍はジリジリと後退。物語の舞台となっているエミリアロマーニャ州やトスカーナ州の山地が、ドイツ軍&ファシストvs.パルチザン(partigiani)の攻防の激戦地と化していた。(イタリアのパルチザンとは、各地で生まれた民間組織で、ゲリラ的に出没してドイツ軍&ファシストと戦った。) パルチザンのアジトは山の中、村人たちは自分たちの救世主であるパルチザンを支えていたし、パルチザンの活動に参加する村の若者も多かった。村人たちの結束は固く、ドイツ軍にパルチザンの居所を聞かれても決して答えなかったという。それが村人たちが総虐殺された理由と聞いたことがある。主人公マルティーナの母親も、牛小屋で脅されても口を割らなかった。おそらく最期の時も口を割らなかったのだと思う。

ボローニャの商人(最初からいかがわし奴に見えた)が連れてきた変な顔の男(「自分は勝つ方につく」と言っていた)が、村に疎開してきた時 パルチザンに入ったのに、後半でSS(ナチスの野戦部隊)の制服を着て村人を殺していた。こいつが裏切者だったわけだ。

印象的だったシーン:
*パンを分けてくれた優しいドイツ兵がパルチザンに銃殺されるのをマルティーナが見てしまうシーン
*爆音で耳が遠くなった主人公の父親が妻の死を知って、せっかくSSの手から逃れたのに、自らSSへ向かっていき殺されるシーン(娘と生まれたばかりの息子が生きていることを知っていたら、死ななかったかもしれない)
*マルティーナが誰もいなくなった自宅の中を見て回り(どの部屋にもまだ家族が生活をしていた痕跡が残っている)、弟を抱えて屋外の木に座り、かつて母が歌ってくれた子守唄を弟に歌うラストシーン(前半の心の声を除き、彼女が声を発するのはここだけ)。
*突然ドイツ兵がやってきて、パルチザンをかくまう時間稼ぎのためにドイツ兵に塩を持っていくアルバ・ロルヴァケルが、ワンピースの胸のボタンを一つ外す繊細な演出はよかった。

緊迫する殺戮シーンが後半30分くらい続き、凄惨さに唖然となり涙も出なかった。もともと弟の死で心が凍りついているマルティーナが両親、祖父母、叔母たちすべてを奪われ、さらにつらい人生を背負わされることに心が締めつけられた。生まれたばかりの次の弟が生き延びたのがせめてもの救いか。
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