映画漬廃人伊波興一

ミツバチのささやきの映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
5.0
スペインが舞台でありながらフラメンコとジプシーとも無縁。人民戦線の敗戦地の象徴という記号さえも拒否してみせた只ひたすらに詩情あふれる百本以上分と対価以上の映画として「ミツバチのささやき」を語らせていただきます

映画談義で少し諍いがありましてしばらくは沈黙しようとも思ったのですが他ならぬ私の中で蠢く「映画」という蟲が「早くどなたかを自分のところへ誘え」と迫ってきましたのでいささか負傷した今の自分を癒してくれるのはまさにこの映画!!

二人の幼い姉妹が村の集会所にかかった巡回映画に強く惹かれ肉親にさえ語れない秘密の体験に身を任せる奇跡的な映画です。
(劇中映画)という媒体がとても重要な役割を演じて、その映画の中で展開されるフランケンシュタインと少女との
挿話に父親のイメージを読み取らずにはいられません。

思春期とさえ呼べない年頃の少女の性のイメージが抽象的でなく抑圧と解放のはざまで葛藤する様子はまさに一級のサスペンス!

もちろん30年ほど前の初見の時に躊躇うことなく「素晴らしい」と思ってましたがこの相当年月を経てなお今度は「空恐ろしい」とさえ感じる生々しさ。

「生きた映画」って熟成も発酵もしません。ただ「歳月に逆行するように生き続ける」のみ。

私自身は齢を重ねただけですが・・