このレビューはネタバレを含みます
東ドイツ時代の国家保安省シュタージによる監視社会が背景になった作品。
wiki情報によると主人公ヴィースラー大尉を演じたミューエも東ドイツで実際にシュタージの監視下にあったようだ。
人々の思想や行動を監視しないと成り立たない共産主義社会ではいつ何処でも気が抜けず、見ているだけでも疲労感を覚える。
家族も友人もいそうにないヴィースラー大尉が、昼間は盗聴、夜は呼んだ娼婦にもう少しいてくれと懇願するが断られる場面を見て彼の孤独感が伝わりとても悲しくなった。
心理学の知識を元にこれまでも数多くの市民を監視、尋問、自白させてきた真面目一辺倒彼が、ゲオルクとクリスタを監視する過程で彼らを庇うようになった理由は何だろうと考えてみた。
孤独だった彼が、ゲオルクの芸術性に触れ、元々持っていたが心の奥深くに秘められていた人間らしい感受性が彼の琴線に触れたのではないか。ゲオルクの弾くピアノに涙する彼を見てそう感じた。
ハムプフ大臣との関係に躊躇いを感じてるクリスタをバーで説得するする彼は、芸術を深く愛し、理解する心を持っており、徐々に共鳴していったのではないか。
女優と付き合う有名劇作家なんてきっと嫌な奴なのだろうと思ったが、ゲオルクは人間的にもとても良い人だったのも印象的。
頭の良いゲオルクが、ヴィースラーの存在に気が付き最後に取った行動には、ヴィースラーの長年の苦境の日々が報われた気がして涙が出た。