善き人のためのソナタ、って題名どんぴしゃすぎる。
特に「善き人」っていう表記がオツです。
ホラーとかスリラーって書いてあるけど全くちがいます。
善悪ってなんだろうね、って話です。
自分を「善き人」だとしたとき、反対の思想を持つものは「悪人」なのだろうか。
自分たちのイデオロギーのために、反乱分子を徹底的に叩き潰していた主人公が
ソナタを聴いたあとに子ども(厳密にいうとその親)を見逃したところ、分かりやすくひっくり返ってたね。
盗聴は、善きことのためならば許されるのか。
周りの党員にも思想なんてものはなくて、食堂でジョークを聴いているときの主人公の表情ったら、むなしかったろうね。
ソナタを聴いたあとにこれまでしていたことが出来なくなるって、じゃあ今までやってたことを主人公は善悪どっちで捉えてたんだろうか。
基準は常に揺らぐものなんだと強く感じた。
流されない強さ、みたいなものが叫ばれる昨今、
どうしても流動的になる価値観も知ってないと足元を掬われるような気がした。
権力に芸術が飼い慣らされてる構図も
覚えとかなきゃいけない要素だったかな。
おかげでラストシーンが際立つわけだけど。
善かれと思ってやったことが報われたような、細かいことは気になるけどきれいなまとめ方でした。