稀

善き人のためのソナタの稀のレビュー・感想・評価

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)
4.5
監視していたターゲットに肩入れして自分の身を危うくしてしまう話。

20年ぶり2度目の鑑賞。以前はロシア支配下の管理社会が強く印象に残っていたが、今回は予備知識もあったためか、主人公が自ら危ない橋を渡りに行っているように見えてハラハラした。
主人公が常に目をかっぴらいていて、いかにも国家の忠実な下僕のような表情なのに、内心では天秤がグワングワンに揺れているのが伝わってきた。絵面はほとんど動きがないのに心の動きがダイナミック。
クリスタが内通したことは秘密にすると言ったくせに、タイプライターの隠し場所の気づき方がわざとらしすぎて笑った。事故死はやや唐突に感じたが、国家により蔑ろにされ続ければ自暴自棄にもなるか。
ラストのセリフは一回自分の口で言ってみたい。そのためには「贈り物ですか?」と聞いてくれる書店を見つけないといけないな。
稀