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善き人のためのソナタのhmzのレビュー・感想・評価

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)
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展開としてはわかりやすく、すっと心に染み込んでくる。

東西分断当時の東ドイツの監視社会の異常さを、国に忠誠を誓った男の心が少しずつほぐれていく姿と対比させてヒリヒリと見せる。

ヴィースラー大尉、尋問の腕は一流だけど、実は監視業務は初めてなのかな?
と思う程、早い段階で監視対象に感情移入しちゃうし、唐突に監視対象に接触してしまうし、なんとなくこの仕事は向いてないというか、序盤の心の変化は結構無理があるように感じてしまう。
大尉という階級ならば組織のあり方をよく知っていただろうし、事情など関係なく誰かの人生を丸ごと潰すことなんて色々織り込み済みだったでしょ?とも思う。

けど、仕事人間として生きてきた結果、孤独であったヴィースラーの心を動かしたのは、音楽だったり女優のクリスタだったり、芸術だった。
という解釈をするのがこの映画の正解ということでいいのでしょうね。
芸術が人の心を動かすということは本当に起こることで、それはもう理屈で説明できるようなものではないですから。

それにしても、資料見られるのはすごいな。
実在するシステムなのかな。

ラスト30分、起こる出来事は劇的なはずなのに、ずっと静かに進む。
今年は年末に良い映画を観れたなあ、と思えるような良作。
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