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日の名残りのtoriten45のレビュー・感想・評価

日の名残り(1993年製作の映画)
4.1
イギリス貴族の歴史ある邸宅に従事する執事スティーブンスと女中頭のミス・ケントンの間で繰り広げられる淡い恋の物語です。特殊な職業がゆえの感情を抑えた恋の行方が見応えありました。

執事を演じるアンソニー・ホプキンスの演技は本当に繊細ですね。『羊たちの沈黙』('90)に匹敵する唯一無二の演技が、作品の最大の見どころではないでしょうか。そして仕事熱心で曲がったことが嫌いなミス・ケントンを演じるエマ・トンプソンもとても魅力的で素敵でした。

ジェームズ・アイヴォリー監督は、ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロによる原作にかなり手を加えており、忠実な映画化とは言えないとの批評もありますか、これはこれで素晴らしい作品だと思います。

家主への忠誠や品格を重んじ、自分にも部下にも厳しいスティーブンスに対して時には反発することがあるも、いつしか恋心を抱き始めるミス・ケントン。彼女からのアピールに揺さぶられるスティーブンス。観ててヤキモキ、ドキドキさせられます。

とくにスティーブンスが書斎で夜な夜な読んでいる本の内容を知ろうとするミス・ケントンの大胆なアプローチにナイーブな中高年ボーイズはアワワとなるでしょう。固まるスティーブンスの緊張感が伝わってきて、まさに息が詰まる思いでした。ナイーブなので。

気になっているならもっと優しい言葉かけられないの?ってツッコミ入れたくなるシーンが多々あって、スティーブンスの情けない振る舞いは、ときにユーモラスでもあり、哀愁に満ちていたりもするんですね。目をそらしたりしてちょっと笑える。

原作が未読の方は、せっかくの機会なので小説の方も読んでみていかがでしょう?せっかくだけど私はまだいいかな。
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