映画漬廃人伊波興一

人生劇場 青春・愛欲・残侠篇の映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

4.1
加藤泰がこの世へのせめてもの心遣いに礼讃するところの(現し世)は夜の夢と見まがうばかり。

加藤泰『人生劇場 青春・愛欲・残侠篇』

野辺に繁茂する雑草のような俠客たちも、咲き乱れる干草のような女郎たちも、樹陰にゆったりと巨躰を横たえるような親分衆も、そこかしこに飛び交う怒声や、彼らの背中の紋に滴る健やかな流汗、躍る長刀、西陽の斜光が長い影を落とす草むした墓地や橋、船着場さえ、
映画が映すこの(現し世)たちに見惚れているうちに筋の軸などとっくに置き去りにして3時間弱の快楽に浸っていた自分に気づいたのでした。