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狼たちの午後のEyesworthのレビュー・感想・評価

狼たちの午後(1975年製作の映画)
5.0
【無計画銀行強盗、一世一代の交渉】

シドニー・ルメット監督×アル・パチーノ主演の1972年に起きた実際の銀行強盗事件をもとに1975年に製作されたクライム映画。

〈あらすじ〉
無計画に銀行を襲った結果、篭城せざるを得なくなったソニー(アル・パチーノ)とサル(ジョン・カザール)の二人。警官隊に包囲される中、やがて強盗と人質の間に奇妙な連帯感が芽生え始める。1972年に起きた実話を元に製作。

〈所感〉
いやー面白い!まさに、こういうのでいいんだよ!という映画。他のアル・パチーノ作品はどうも暗い印象なのでこれから見始めるのも有りかと。銀行強盗なので『レザボア・ドッグス』をどうしても想起してしまうが、そっちよりもバイオレンス要素が無く、アホでユルい。これだけセンセーショナルな事件ながら全く血が見られないのが面白い。
冒頭から強盗三人衆のうち一人が早速リタイアして、さらに金庫には金が殆ど無いというまさに泣きっ面の蜂の事態。さらには、警察に即座に包囲されてしまう。この無謀で無計画な強盗を見て、人質から逆に心配される始末。ここら辺で、ああこの映画は真面目なコメディなんだな、と思い始める。アル・パチーノ演じるソニーは虫一匹殺せない優しく善良な男で銀行強盗に最も向いていない男だが、肝心の相棒のジョン・カザール演じるサルが無口でワイオミングを外国だと思っている程のおバカさんで役に立たないので、ここぞとばかりに気負っている。この若かりしアル・パチーノの演技が凄すぎる。この映画は基本的にずっとソニーとサルが銀行で籠城しているワンシチュエーション映画で、BGMは殆ど皆無であるにもかかわらず、人質との馴れ合いと警察との交渉が面白すぎて2時間と言わずずっと見ていたくなる。アルジェリアなんかよくわからない国に行かず、もうお前ら仲良く銀行に一生籠城してろ!と思う。
ソニーの彼女(男)、元妻、母親みんな個性的で笑える。ただの強盗が野次馬達に英雄のように扱われ気持ちよくなってるのもリアルでいいなぁ。警察の交渉担当を演じたチャールズ・ダーニングの胆力のある演技も素晴らしい。また見たい。
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