こたつむり

配達されない三通の手紙のこたつむりのレビュー・感想・評価

配達されない三通の手紙(1979年製作の映画)
2.9
♪ 部屋とYシャツと私
  愛するあなたのため
  毎日磨いていたいから

土ワイというよりも火サス。
つまり、猟奇性が高いミステリではなく、ドロドロの情念を描いたサスペンス。血飛沫プシャァッとかを期待しちゃダメな感じでした。

舞台は山口県萩市の上流家庭。
三人姉妹の次女がなぜか狙われる…という展開なのですが、登場人物が少ないので、簡単に先が読めます。彼女はアレで、手紙の真実はコレで、あのときの演出はソレだな、みたいな感じで。

だから、ミステリ要素に期待したらNG。
どちらかと言えば、華々しい女優さんを楽しむ映画なんでしょう。サバサバした感じの小川眞由美さんとか。フルートを演奏する神崎愛さんとか。美味しいところを独り占めする竹下景子さん(三択の女王)とか。

ちなみに製作陣の狙いは女性層だったそうです。
ゆえに、松坂慶子さんがセミヌードを披露しますけど、生々しいエロチシズムは感じません。上品なんです(役柄は上品と言えない感じでしたが)。

つまり、僕は確実に対象外。
って、僕も下品なのは苦手ですけどね。
上品すぎるのもダメなんですよ。ついつい眠くなっちゃうのです。

しかも、事件が起きるのが遅いですからね。
丹念に上流家庭における“重さ”みたいなものを描いているのですが…全体の四分の三くらいが過ぎたところで殺人が起きるのは…さすがに遅すぎますよねえ。

あと、よく分からなかったのが蟇目良さん。
探偵のようでいて探偵ではない…それなのに序盤から主人公扱い…という謎のポジションでした。やたらと挿し込まれるランニングの場面も意味不明です。女性層へのサービスなのかな。

まあ、そんなわけで。
傑作『砂の器』を仕上げた野村芳太郎監督の作品ですが、エラリィ・クイーンの小説を下敷きにしたのにメロドラマの方に振り切ったからか、ミステリ好きには退屈な作品でした。

なので、70年代後半の世相を楽しむが吉。
蒸気機関車の力強い走りだったり、駅の売店に売られている雑誌をチェックしたり、商店街の雰囲気を楽しんだり、パワステがない時代の車の運転は大変だなあ、なんて思ったり…。
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