シネラー

スパイダーマン3のシネラーのレビュー・感想・評価

スパイダーマン3(2007年製作の映画)
3.5
サム・ライミ版スパイダーマンの
完結編となる本作を再鑑賞。
人生で初めて劇場で2回鑑賞した作品
なだけに好きではあるが、
物語の拙さと詰め込み具合は否めない
完結編だ。

スパイダーマンとしてのヒーロー活動も
私生活も順調なピーターの前に、
ニュー・ゴブリンとなった親友ハリー
やベン叔父さんを殺害した犯人である
サンドマンが現れ、
その葛藤や復讐心から
攻撃的なブラックスパイダーマンとなる
物語が展開されるが、
ピーターとハリーそれぞれの復讐心に
対する応えや友情といった点が
個人的に好きな要素だ。
ヒーローであっても復讐心を抱き、
それに対して最も難しい決断をする
ピーターは、やはり等身大の身近な人物
でもありヒーローだと思った。
更に、
ピーターがシンビオートに寄生された際
のトビー・マグワイアの演技は、
その振る舞いの描写は差し置いて、
見事な顔つきの豹変具合だと思った。
前作以上に物語が拗れていてシリアスだが、
清涼剤とも言えるジェイムソン編集長の
コメディシーンは昔から好きだ。
アクションに関しても、
登場ヴィランの多さもあって豊富であり、
サンドマンのきめ細かな表現
やアクションシーンが個人的に
好きな場面だった。

ちなみに本作には、
シーンの順序や撮影カットの変更、
場面の追加がされたエディターズ・カット
というものも存在している。
その中でも最も大きい変更点は、
多くの人が「早く言え」と思ったであろう、
ハリーが父親の死の真相を知る場面が
削除されている事だろう。
それによって終盤にハリーが、
純粋に親友としてピーターのもとへ
駆けつけたという主旨が強くなっており、
素晴らしい取捨選択をしていると思った。

不満点としては、
悪しきヒロインのMJに関してだ。
三部作全作において、
恋愛対象を取っ替え引っ替えし、
ヴィランに拉致されるノルマでも
彼女は課せられているのだろうか。
ましてや本作のMJは、
自身の仕事が上手くいかなくて
ピーターに当たる自己中心的な面も強く、
ハリーがピーターを陥れる事が
分かっているのに何も行動しない等、
良い部分を探せと言わんばかりだった。
一部に関しては、ピーターが調子に
乗った行動故だと理解できなくないが、
それでも三部作通して何も成長がない
ヒロインだと思った。
更に、本作は物語自体への拙さも目立つ。
作品のテーマとして、
自分や相手を赦す事が
物語の肝となっているのは分かるが、
多くの市民に被害を及ぼしたサンドマン
の処罰がピーター個人の
判断で終えてしまうのは、
少し疑問の残る部分ではあった。
取って付けたような登場となった
ヴェノムに関しても、
動機が逆恨みである為に小物な
印象が強く残念だった。
そして、後の"スパイダーバース"でも
ネタにされた、ピーターのダンス描写は昔も今も観ていて恥ずかしくなった。

もっと上手くエンディング
を迎えられたと思わなくもない、
詰め込み過ぎた完結編であると思う。
しかし、前2作までで繰り広げられた
ピーター、MJ、ハリーの物語の終焉であり、
アクションを含めて嫌いにはなれない
ヒーロー映画だと感じられた。
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