Punisher田中

スカーフェイスのPunisher田中のレビュー・感想・評価

スカーフェイス(1983年製作の映画)
4.2
舞台は1980年、マイアミ。
キューバから追放され、フロリダ州マイアミへとやってきた犯罪者トニー・モンタナ。
収容施設でトニーは、同じ施設送りのマニー・リベラらと共にマイアミの麻薬王フランクの一味の依頼で元キューバ政府職員レベンガを殺害するのだった。
その後、トニーは飲食店の皿洗いで生計を立てようとするが、割の合わない業務に嫌気が差し、裏社会で成り上がることを決めるトニーだったが...

狂ったビジネスで回る裏社会を真っ直ぐで図太い男が底辺から成り上がるマフィアもの。
hiphopのリリックでよく目にするワード「スカーフェイス」の元となった作品だが、今作主人公のトニー・モンタナのアウトローながらも筋の通った男らしさと、どんなに不利益な状況でも自分の鉄則を守り抜く信念の固さは、正に男としてはお手本にしたいほどカッコいい。
共感などはしなくていい、ただこの男の行く末を見届けて欲しいと言わんばかりの丁寧に描かれたシーンの数々やどうしようもないただのチンピラだった男が次第に本物の""男""に見えてくる構成は好き。
アル・パチーノの狂演は言わずもがな素晴らしいものだが、スリリングでサスペンスの様な臨場感のあるカメラワークと煽りが見事に作品を彩っていた。
個人的に最高のゲーム「GTA VICECITY」を思わせる、パステル調の色彩で彩られた表側の世界と閉塞感を感じるブラックな裏世界を景色的に写している所やトニーが成り上がるに連れて次第に色彩が暗くなっていくセットや景色が今作をより際立たせていると思う。

そして映画史上類を見ない程、最高の盛り上がりを見せる異常なテンションのクライマックスは本当に良い、これこそが今作で本当にやりたかったことなんだなと感じさせてくれる作り込みの深さは異常で、2時間50分もの長い作品でありながらも「これで終わりじゃないよな!もっと見せてくれよ!」と思わせられる物となっているのは純粋にスゲェ...1番画がイキイキしていた気がする。
しかし、今作が名作と言われる所以はどうしようもないクズ男がどうしようもないクソ商売で成り上がり破滅していく、どうしようもないストーリーをブライアン・デ・パルマの持つ個性とアル・パチーノやオリヴァー・ストーンらキャスト達の持つ個性がマッチし、とにかく格段に面白く魅力あるものに仕上げたこと。
彼自身の魅力ではなく、彼の生き様による魅力で成り立つ傑作だった。