キャッチ30

エレメント・オブ・クライムのキャッチ30のレビュー・感想・評価

4.0
 暗く陰鬱な映画だ。デヴィッド・フィンチャーの『セブン』を彷彿とさせる世界観だ。然も、映画は夜の場面が多い。

 舞台は文明が崩壊した感じの強い20世紀末のヨーロッパ。刑事フィッシャーは宝くじ売りの少女を標的にした連続殺人事件を担当する為にカイロからヨーロッパに派遣される。フィッシャーはかつて事件を担当した恩師のオズボーンの捜査記録からハリー・グレイという容疑者を突き止める。捜査の過程でフィッシャーはキムという娼婦と出会い、惹かれていく……。

 題名は「犯罪の原理」と読み、オズボーンの著作から引用されている。フィッシャーはオズボーンの著作を引用し、犯人の心理に迫り、行動を読み取ろうとする。しかし、この手法は刑事が犯人と同化する危険性があった。ミイラ取りがミイラになる様なものだ。フィッシャーは深みに嵌り、闇に堕ちていく。錆びれたホテルや下水道はフィッシャーの心の状態を表しているようだ。

 これがデビュー作となるラース・フォン・トリアーは刑事の心の闇に観客を引き摺り込む。セピア調で絵画的な撮影も眼に焼き付く。水のイメージが強く、水中に浮かぶ馬の死骸や滴る水滴は不気味だ。