ピロシキ

静かなる決闘のピロシキのレビュー・感想・評価

静かなる決闘(1949年製作の映画)
3.7
黒澤史上・最もおとなしい三船。とはいえ終盤は、かなり感情が爆発してるけど。それでもやっぱり三船敏郎が、ならず者でも荒くれ者でもなく、ストイックな医師という役柄をこなしている点で異色。「赤ひげ」とも違って、こちらは聖人と崇められるほど熱心に患者に尽くす、多くを語らない寡黙な若い医師である。そして彼をそんな人格に作り上げたのが、他ならぬ梅毒という病であり、これによって彼の運命は大きく狂っていく。健気なフィアンセのオネエさんが「納得できません!どうしてワタクシをお捨てになるのですか号泣」と詰め寄るも、三船は何も語らない。うつしてしまうから結婚できない、なんて。

劇中での描かれ方によって、当時の日本でどれだけ梅毒が恐れられていたのかがわかる。一度罹ったら最後、一生かけて付き合っていく病。そりゃもう、アンチ梅毒の啓発ビデオかってぐらい。暗い物語である。少年のオナラが出て皆んなでお祝いするシーンあたりが、せめてもの救い。それ以外はだいたい悲惨。
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