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男はつらいよのツボのレビュー・感想・評価

男はつらいよ(1969年製作の映画)
4.0
こんなに面白いんだ。そりゃ50作も続きますよ。

90分という時間の中で、何本ものコントを見たような感覚だった。寅次郎の帰郷、さくらのお見合い、さくらと博の結婚(式)、寅次郎と冬子の関係と盛りだくさんである。濃密な90分だった。よくここまで上手くまとめたなと。

まず、寅さんという人物に関して。正直、ここまで荒くれものだとは思っていなかった笑。さくらを殴るなど意外と暴力的な面があったり、下品な言葉を連発していたりと、想像以上の荒くれものだった。しかし、彼から学ばなければいけないことは多くある。彼が愛されるのは自分の心に素直だからだろう。嬉しい時には喜び、悲しい時は誰よりも凹む。ドジで空回りしてしまう一面もありつつ、一生懸命誰かのために行動できる。だから憎めない。むしろ彼の存在が愛おしくなってくる。彼のような「利他的な存在」がいるからこそ、社会は暖かくなるのかもしれない。

しかし、彼が愛されるキャラとして通っているのは、小さなコミュニティの中だからなのかもしれない。もし彼が現代社会に蘇ったら、ADHDという診断を受け孤立していたと思う。「古き良き日本」の中にあった「コミュニティの大切さ」というものに気がつかされる。今の日本にこのような個人が帰るべきコミュニティというものがない。例え、出て行ったとしても、「バカだねぇ」と再び受け入れてくれるような、そのような親密なコミュニティがあってもいいのではないだろうか。

両親から「バカだね」と言われてきた私だからこそなのだろうか。寅さんに呆れた竜造の「バカだねぇ」からはそこはかとない愛情を感じてしまい、「バカだねぇ」を待っている自分がいることに気が付く。通常であれば同じパターンの繰り返しをしていると、観客は飽きるはずだ。しかし、全く飽きない。(2・3作目まで鑑賞したが、構成はほとんど変わらないのね笑。でも、やっぱり飽きないからすごい。むしろそれが「待ってました!」となって笑けてくる。)
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