ククレ

男はつらいよのククレのレビュー・感想・評価

男はつらいよ(1969年製作の映画)
3.2
最近、「寅さんは発達障がいか?」という話をしたことがあって、配信があったから久々に観てみた。なるほど…そういう視点で観るとおもろいな。

昔から「男はつらいよ」はあまり好きではなかった。父が大好きだったので子どもの頃にいくつかは観たことがあって、断片的に記憶に残っていたけど、「東京弁の喧嘩と怒鳴り声」という印象があって、自分から観てみようと思わなかったんやね。

今回改めてじっくり観てみると、寅さんは確かに、ADHDっぽいわな…。行動や言動全てが危なっかしくて、周囲は振り回される。でも、ドタバタしながらも人情にほだされて、それなりにホロリとさせられるのだけど…やっぱりイライラしてくるわ〜。障がい者支援の仕事をしてるからなのか、寅さんに対して、というよりもさくらやおいちゃん達の対応の仕方にダメ出ししたくなる〜!寅さんにはそれでは伝わらへんで!って。

口は立つけど不器用で、名言吐くけど矛盾していて、行動力あるけど短絡的な寅さんを、「バカだねぇ」って言いながらも受け入れていく浅草の人々の「懐の深さ」に共感できるかどうかなんだろうな、と感じた。「発達障がい」なんてラベリングするのは野暮。こういう「しんどい人」を中心に巻き起こる人間模様を楽しむ作品なんやね。落語に出てくる「与太郎」なんかも同じやね。たぶん、昔の方が親戚や近所付き合いの人間関係が密やったから、成立するんやろうな。現代ではもっとシビアなドラマになるような気がする…。

古今東西、様々なストーリーの「愛すべきキャラクター」は、突き詰めて考えると「発達障害」の範疇に入ることが多い。人とは違う個性的な発想力、行動力だからこそ面白いドラマが生まれるんやな。
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