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男はつらいよのkojikojiのレビュー・感想・評価

男はつらいよ(1969年製作の映画)
4.6
 1400本記念レビューはこの映画にした。
「男はつらいよ」第1作。

映画「男はつらいよ」シリーズの全ての要素が凝縮されているこの作品、この映画を観ずして、寅さんは語れない。 

最初から寅さんがテキ屋の啖呵(たんか)を聞かせる。
これもまたこの作品の絶対的魅力だ。

⚫︎『ヤケのヤンパチ陽ヤケのなすび、色が黒くて食いつきたいが、あたしゃ入れ歯で歯が立たないよときやがった。
角は一流デパ-ト赤木屋黒木屋白木屋さんで紅白粉つけたおねえちゃんから下さい頂戴でいただきますと、五百が六百下らない品物ですが、今日はそれだけくださいとは言いません。何故かと言いますと、神田は六圃堂という書店が僅か三十万円の税金で、泣きの涙で投げ出した品物です。四百、三百、二百、どうだ百両だ、どうだ!』

 ただ1つだけ、この作品でしか観れないものがある。それは独身の妹「さくら」だ。
さくら役倍賞千恵子が若い。しかし演技はもうすでに一流。
寅さんに恋をぶち壊され、柴又を去ろうとする博。さくらは彼を追いかける。すんでのところで追いついたさくら。二人は電車に乗る。
帰ってきたさくらが荒い息の中、寅さんに言う。
「お兄ちゃん、私、博さんと結婚する」
このシーン、泣きます。

さくらの見合いをぶち壊し、博と喧嘩して、さくらの恋までぶち壊すところだった。しかしそれがきっかけで、博の3年の恋は実る。

 博とさくらの結婚式。7年間絶縁となっていた博の父(志村喬)が出席。全く笑わない父親に寅さんが爆発寸前。新郎の父の挨拶が始まる。「私達夫婦はこれまで何をしてきたか…」
志村喬がこの挨拶だけで泣かせる。志村喬がみせる。この映画最大の泣きどころ。私は今回また嗚咽が出た。

最後はお決まりの寅さんの恋。
第1作はなんと言ってもこの歌だろう。
御前様のお嬢さん(光本幸子)に恋をした寅さん。1日デートをした帰りお寺にお嬢さんを送った別れ際。お嬢さんから握手を求められる。寅次郎の恋心が激しく燃える。
夜中の柴又商店街を寅次郎が歌う。さっきまでお嬢さんが歌っていたこの歌だ。

♪殺したいほど惚れてはいたが
指もふれずにわかれたぜ
なにわ節だと笑っておくれ
ケチな情けに生きるより
俺は仁義を だいて死ぬ♪
 
第1作目から見事なまでの失恋💔
寅さんはいつものように旅に出る。そして1年後、寅さんからのハガキが御前様の元に届いている。

「……恥ずかしきことの数々
今はただ反省の日々を送っています。」例の文字で。

最後のシーンもいつもながらの旅の下。寅さんが本を売っている。啖呵売をやっている。
⚫︎『七つ長野の善光寺八つ谷中の奥寺で、竹の柱に萱の屋根、手鍋下げてもわしゃいとやせぬ。 信州信濃の新そばよりも、あたしゃあなたの傍がよい、あなた百までわしゃ九十九まで、共に虱のたかるまで、と、きやがった、どうだ。』

#1400 2023年 434本目
公開日: 1969年8月27日 (日本)
監督: 山田洋次
音楽: 山本直純
映画脚本: 山田洋次、 森崎 東
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