SANKOU

男はつらいよのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

男はつらいよ(1969年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

寅さんの破天荒で、礼儀知らずで、場の空気を読まない自分勝手な性格、でも悪気はなく、情に熱く、惚れっぽい割に奥手で、底抜けに明るくて、そして実は繊細な心を持った持ち主、と挙げだしたらきりがない魅力が詰まった『男はつらいよ』記念すべき第一作品目。
久しぶりに柴又に戻ってきた寅さんとおいちゃん、おばちゃん、そして妹のさくらとの感動的な再会場面。
「今まで迷惑かけてすまなかった」と謝る寅さんだが、これから長いシリーズを通して今後もたくさんの迷惑をかけ続けることになるのだから面白い。
早速さくらの見合いに同席した寅さんの非常識を通り越したハチャメチャぶりと下品さに、おそらく観ている誰もが何てとんでもないやつなんだと感じるに違いない。
寅さんシリーズの凄いところは毎回特別にドラマチックな展開が待ち受けているわけではないが、彼の破天荒ぶりにまるでジェットコースターに乗っているみたいに喜怒哀楽を揺さぶられるところだ。
車寅次郎という悪気はないながらもいつも問題を起こす彼に憤りながらも、彼の人間臭いところや考えていることがすぐに分かってしまう単純なところが何故か憎めず、そして気がついたら彼にどっぷり感情移入してしまう。
特にこの一作品目は、ひとつの物語の中での喜怒哀楽の表現が巧みだったと思う。
妹のさくらと博の純朴な恋愛が微笑ましくて、タイミング悪く帰ってきてしまった寅さんの手によってまたもや台無しになってしまうかと思いきや、結果的に両者ともに思いきりがついて結婚することになってしまうのがとても感動的だった。
さくらが寅さんに「博さんと結婚してもいい?」と尋ねたときに、少し恥ずかしそうに頷く寅さんの姿がとても可愛らしかった。
今回のマドンナである冬子と寅さんの恋物語も控えめではあったが見所あって面白かった。記念すべき彼の第一回目のフラレっぷりもなかなかに哀愁を帯びていた。
初登場時のさくら役の倍賞千恵子の可憐さが際立っていたのと、やっぱりおいちゃんは森川信が一番いいなと感じた。「バカだねぇ」の情感たっぷり込めた言い方は彼にしか出来ないのではないか。
志村喬演じる博の父(最後まで下の名前を誰も呼べないのが可笑しい)が博の結婚式で、スピーチを述べるシーンも印象的だった。息子を見捨てた親のことを快く思わない寅さんが、一発強く言ってやるつもりでいたのに、最終的には情を移されて涙を流しながら手を取り合うシーンはとても良かった。
フラレた後に寅さんが旅に出るパターンはこの後のシリーズでもお決まりだが、最後は何だかんだで明るく終わるのがいい。
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