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捜索者のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

捜索者(1956年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

家族を殺したコマンチ族を探す、男達の話。

最初は「牛泥棒を捜索する牧歌的な話なのかな~」と思いきや、捜索してる間に家族が殺されるという、まさかのハードコア展開に驚かされました。

モニュメントバレーを映した雄大なロケーションは、テレビ画面で見てもスケールを感じられたし、アメリカパイソンの群れやその射殺シーンなど、今ではもう見られないであろう映像も衝撃的。
馬が全速で駆けていくアクションはシンプルに迫力があり、洞窟の中から外を捉えた象徴的なショットも印象に残りました。
画面の両サイドが黒で潰れる構図はラストショットでも使われるわけですが、復讐に取り憑かれた主人公の心象風景を示していたのかもしれません。

一方、不満点としては、全体的に説明不足な事が気になりました。
例えば、主人公は異常な程にコマンチ族への憎悪を抱えているのですが、どうして憎悪しているのかが分からない。
解説等を読むと、母親をコマンチ族に殺されたとの事ですが、そんな説明ありましたっけ?
最終的には心変わりが描かれるものの、心変わりした理由は描かれないのでモヤモヤしちゃったかな…。

あとは、ジョン・フォード作品…というか、昔の映画にありがちなのですが、中盤にメロドラマやコメディー要素が入ってくるのは、どうしても中弛みを感じてしまうところ。
これはこれでエンタメ要素として楽しめれば良いのですが、このせいで映画全体の緊張感が削がれた気もするし、主人公達が何年間も捜索し続けてる苦労がイマイチ伝わり難くなってしまった様にも思います。
個人的には、主人公の執念や狂気をもっとストイックに描いて欲しかったのですが、そこにフォーカスして作られたのが(本作の影響を受けて作られたという)『タクシードライバー』なのでしょうね。

コマンチ族の描かれ方も含め、今見ると引っ掛かる部分もありますが、逆に今見ても、まったく色褪せずに楽しめる部分もあり、こんなにも「大きなスクリーンで見たいな~」と思わせる作品は珍しいかもしれません。
スピルバーグに敬愛されるだけはあるというか、流石はジョン・フォードだなと思わされました。
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