8Niagara8

歩いても 歩いてもの8Niagara8のネタバレレビュー・内容・結末

歩いても 歩いても(2007年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

身内の死が持つ絶対性とそれによる家族の瓦解。
父にとっては後継ぎ、母にとっては寵愛した長男。
そこに良多はひたすらコンプレックスを抱き、嫌気もさす。そして、彼らに対して虚勢を張り続ける。
ただ、偏屈な父は引退して、ますます弱っていくばかりで、母は未だに怨念じみているものの、彼女もまたそこに弱さを見せる。
両親の変貌を二人の死をもって、良多は認識するわけだが、そこでようやく自分に対する愛にも気づく。しかしながら、それでは全くもって遅いのである。
人生はいつもちょっとだけ間に合わない。
家族に限ったものではないが、ちょっとしたすれ違い、思い違いが結局大きな亀裂を生み得る。

家族が集まっての団欒のはずであるが、重苦しい雰囲気で長男の不在をありありと浮き彫りにする。
良多の連れ子あつしの存在が極めて重要であった。
血が繋がらない少年が見た家族の風景は何ら邪念なく映るわけで、浜辺に打ち上げられた船だってそう。
しかし、家族の生々しさに触れたことであつしも実父の存在を強く認識するわけで。
家族とそれ以外の者たちの線引き、コントラストが実にリアリティがあり、残酷にも思える。
ただ血が繋がっているからこその苦しみもあり、むしろそっちがはっきりと描かれている。
15年もの歳月を優に超越してくる肉親の死というものは悲劇的なものかもしれないが、同時に家族であることの喜び、希望も内在しているかもしれない。

いちいちショットが冷酷であるのも素晴らしい。
家族ながらもジメッとしていて、テーマは極めて小津的なるものに覆われているとも言える。
でも、是枝さん好きなのは成瀬だもんで、ショットはそっち寄りにも感じたりする。
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