タマル

上意討ち 拝領妻始末のタマルのレビュー・感想・評価

上意討ち 拝領妻始末(1967年製作の映画)
3.9
三船敏郎が前田吟に見えるんですけど!?

以下、レビュー。


原作モノであり、原作は滝口康彦の『拝領妻始末』。
拝領とは主に主人から何かを貰うことを示す謙譲語で、ここの始末とは殺す方ではなく「始末書」のような物事の始終を示す言葉として使われている。
要は「頂戴した妻の事 その顛末」 という意味と理解して頂きたい。
映画のタイトルとなっている『上意討ち』については、あんまり意味が判然としないので、江戸とかに詳しい人に聞いてもらいたいものである。

ちなみに、本作は輸出されており、外国題は “Samurai Rebelion” である。
rebelion は日本語で「反乱」のこと。 訳単体で見れば revolutionと同義にも思えるが、revolutionが成功した革命を示唆するのに対して、この言葉は失敗に終わった謀反をさす場合が多く、本作のタイトルとしてより端的にその本質を現しているといえるだろう。

本作の主演は三船敏郎であり、前述した通り前田吟のような面構えをしている。別に前田吟が嫌いとかそういうアレではないのだが、私の中で三船敏郎=野生的剣客 みたいな美化イメージがあったので、ともすればショボくれたようにも見える三船は私のテンションを大いに下げた。 だが、蓋を開けてみれば、1967年三船絶好調である。『椿三十郎』の大立ち回りを凌ぐほどに完成された三船がそこにはいた。彼は5年のうちに剣士から達人へと変貌を遂げたのである。 そう考えれば、彼の面相の変化もそれに伴ったものだったのだろう。いつものワイルドの極致たる三船敏郎とは、また違った魅力の溢れる作品であった。

と、前述した通り三船がサイッコーなので、この映画に関して概ね満足と言えるのだが、ただ少し不満を感じなくもない。
例えば、小林正樹という人は非常に緊張感のある映画を作る監督で、その代表作『切腹』では常に「切腹するのではないか」というストーリーの緊張感が映像の緊張感と相まってミラクルを起こしていた。しかし、本作においてはその映像の緊張感が話の内容を超過してしまった感がなくもない。もう少しトーンを軽くするか、より内容をヘビーにするか。個人的には作品の尺がもっと凝縮されて100数分ぐらいだったなら、文句なしに傑作だったと思う。

仲代達矢の怪演にも注目すべし!!
オススメでございます!!!!
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