8Niagara8

残菊物語の8Niagara8のレビュー・感想・評価

残菊物語(1939年製作の映画)
4.6
映像的な充実度と美麗さに息を飲む。カメラワークに惚れ惚れし、長回しに釘付けにされる。

男女の直情的ではない、より深く揺るぎない悲嘆を帯び、情感溢れた愛憎劇。
芸能世界という枠組みが一層家や恋愛の堅苦しさを増長させ、他方二人の愛情の絶対性、時間の不可逆性を浮き彫りにする。
溝口は人生は気づいた時には遅いという大きなテーマを既に看破している。

主人公は男でありながら、女の物語。
その人生を捧げる真摯な献身と健気な姿。
他の作品と同じくして、その視座は憐憫的なものではなく、その1人の人間としての強さを切々と描く。
男は難局において楽な方を望むし、一時の感情に素直である。他方、女の方が理性的で将来を踏まえた判断をする。

溝口作品やはりラストシーンは美しさ、儚さ、やるせなさ、あらゆる感情を詰め込みながら、そして尚芸術的なセンスも満ち満ちており、圧巻である。
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