8Niagara8

不安は魂を食いつくす/不安と魂の8Niagara8のネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

ファスビンダーの味たっぷりでありながら、眼差しが温かい。
実直な二人の愛は揺るがないのは現実以上に美しいのだが、そこが実に映画的で、メロドラマにふさわしい。
こうしたテイストを含め、シュールな絵面とかはめちゃくちゃカウリスマキ。
移民に対する態度はかなり攻撃的なのは当時の情勢を踏まえれば、想像に難くないが、そうした社会の不寛容さが今も変わらず、この作品が一層クリティカルなメッセージ性を持つことは悲しき現実である。
またそうした半ば無意識のうちの攻撃性がナチズムを許容したとも言える。ヒトラーの言及は単なるものではない。
その点エミの言動にも危うさがあるように感じる。旅行から帰ってきて、新入りが来た途端、今度はその移民を除け者にするのに、半ば加担するあたりがなかなかシニカルだなと。
この演出が効いていた。エミを単なる哀しき者にせず、しっかり加害性を描く。
これこそリアリズムである。
そして、みながアリのように強くしなやかなのはずもなく、そして強くあっても題の通り少しの狂いが全てを瓦解させ得るのである。
人間の強さと弱さを抉るように映しながら、特にここではそれに寄り添っているファスビンダー。
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