一人旅

クロスロードの一人旅のレビュー・感想・評価

クロスロード(1986年製作の映画)
5.0
ウォルター・ヒル監督作。

『ストリートファイター』(75)、『ウォリアーズ』(79)、『ジョニー・ハンサム』(89)等男臭いアクション物を十八番とするウォルター・ヒル監督が1986年に撮ったロードムービーの佳作で、ギタリスト志望の少年と伝説のミュージシャンである老人の旅路を独特のタッチで描いています。

実在のブルース歌手であるロバート・ジョンソンがミシシッピの十字路で魂と引き換えにギターテクニックを習得する契約を悪魔と交わす冒頭の場面からも分かるように、本作はロバート・ジョンソンの“クロスロード伝説”を現代に蘇らせた寓話的ロードムービーです。ジュリアード音楽院でギターを学ぶ17歳の都会っ子:ユジーンが、服役囚の療養所で伝説のミュージシャンである黒人の老人:ウイリーと出逢い、彼をミシシッピの故郷まで連れていくことの見返りとしてロバート・ジョンソンが作曲したとされる“幻の30曲目”を教えてもらう約束を交わし、二人はなけなしの金で一路ミシシッピを目指す―という展開で、祖父と孫ほどに年が離れた二人(&道中出逢う17歳の家出娘)が織りなす“大陸南下の旅”を見つめています。

劇中に流れるブルースやロック等の多彩な音楽&演奏シークエンス(ライ・クーダーによる吹き替え演奏)が画面に独特のリズムと雰囲気を作り出していて、とりわけウイリーが吹くハーモニカの音色は脳裏にこびりつくほど印象に残ります。また、北部とは趣きがまるで異なる南部ミシシッピの情景が日常から非日常の空間への進入=“旅感”を演出していますし、ブルース音楽に対する黒人&南部人の深い愛着も読み取ることができます。

27歳で早世した伝説のブルースミュージシャン:ロバート・ジョンソンの足跡を現代の天才ギター少年が辿ってゆく風変りな青春音楽ロードムービーで、『ベスト・キッド』(84)でブレイク直後のラルフ・マッチオが夢見る少年を好演していますし、旅仲間となる老人に扮したジョー・セネカも風格のある存在感を示しています。
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