もとまち

市民ケーンのもとまちのレビュー・感想・評価

市民ケーン(1941年製作の映画)
3.9
ザ・名画として必ず挙げられる作品。

古典なのか若干退屈さは感じたが、ある富豪が最後に遺した「バラのつぼみ」という言葉から、一人の男の人生がミステリー調に紐解かれていく様は結構見応えアリ。
当時革命的と云われただけあって、「動」に満ち溢れたカメラワークも素晴らしい。一面の雪景色からの引きで屋内へと続く長回し、ネオンの看板をダイナミックにすり抜けるショットなど、40年代初期とは思えない鋭利な映像感覚を味わえる。また、呆然と歩くケーンを合わせ鏡によって無限に映し出すシーンは見事。ケーンの何重にも連なった複雑な心情をワンカットで巧みに表現してみせるセンス。

本作もまた、愛を知らない不器用な男の物語なのだろう。やはり、幼い頃両親から得る愛とはとても大切なのかもしれない。結局友人にも女にも見捨てられ、孤独にこの世を去ったケーンは、とても哀れに思える。ラスト、焼け落ちていく『バラのつぼみ』の文字が、何とも切ない余韻を残す。

オーソン・ウェルズの知的さと茶目っ気を持ちあわせた雰囲気が、そのままケーンの複雑な心情と重なっている気がするのも面白い。
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