がく

シン・レッド・ラインのがくのネタバレレビュー・内容・結末

シン・レッド・ライン(1998年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

世界が広いことを知っていて、そのことを映画に反映できる稀有な監督。

その才は内面性の無限の広がりと外部性の無限の可能性を感じさせることで発揮されている。

内面への広がりは、生の歓びや関係性からもたらされる愛と苦悩をカメラ視点と冷静な一人語りによって表現される。詰め込んで語り尽くすようなことはせず、精緻な映像によって想像を広がらせる。

外部への広がりは、カメラの捉える自然の美しさに表現され、自然を愛することが人間本来の能力であり生きる基礎であることを熟知した上で、写し込まれる山や海、高原や川が選び取られている。

カメラは、思いを巡らす男の顔、草木、虫、鳥、ひよこたちを写す。これら自然物は美しいのだ。

それに反する人間の行う愚かさが対比的に描かれる。美しさの中で描かれる矛盾、皮肉というものは強烈な印象をもたらす。

人間性を真に描いた傑作中の傑作だと思う。哲学に貫かれた詩のようだ。
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