Kumonohate

囁く死美人のKumonohateのレビュー・感想・評価

囁く死美人(1963年製作の映画)
4.2
病院長から娘との縁談をもちかけられたエリート外科医が、邪魔になった恋人の看護婦と揉み合いになり、階段から突き落としてしまう。そしてある夜、足が不自由になった恋人を殺害するのだが、それ以来、彼の周囲では不気味な出来事が…。という1963年のホラー(チック)・サスペンス&サイコ・スリラー。これは恐い。「深夜の病院にひびく松葉杖……雨にぬれて死んだ筈の女が立っている!殺した筈の女の……足音が!ささやきが!誘惑の手紙が!」キャッチコピーだけでじゅうぶん恐い。

でも内容はもっと恐い。

最期の最後ギリギリまで、ホラーなのか(幽霊なのか)そうでないのかわからない、という脚本や演出の巧さ。自ら犯した殺人の罪に、心理的に追いつめられてゆく川崎敬三の演技の見事さ。特に、罪悪感が作り出す不安や幻覚幻聴を、医者らしく論理的に否定してみるものの、にもかかわらず再び不可思議な出来事が起き、次第に精神的に追いつめられてゆく、というプロセスの描写の緻密さ。夜の古びた病院の廊下に響く松葉杖の音、というホラー音響の繊細さ。それらが一丸となって恐怖を盛り上げてゆく。

論理的にして緻密にして繊細。和製ホラーの真骨頂。
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