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モ’・ベター・ブルースのnetfilmsのレビュー・感想・評価

モ’・ベター・ブルース(1990年製作の映画)
3.8
 1969年ブルックリン、野球道具を背負った少年たちがブリークを通りから大声で野球に誘う。しかしブリークは母親の監視の元、トランペットの練習中で母親は練習が終わったらと頑なに拒否した。野球狂の父親もブリークを庇うこと無く遊びに行かせてくれない。それから20数年後、ブリーク・ギリアム(デンゼル・ワシントン)はクラブで演奏する花形トランペッターだった。ブリーク・ギリアム・クインテットを率いるブリークのマネージャーは、幼いときからの友達ジャイアント(スパイク・リー)だった。活気溢れる演奏の渦、突如メンバーのシャドウ(ウェズリー・スナイプス)が独り善がりのインプロビゼーションを始める。怒り心頭のブリークは楽屋に戻るとシャドウを責めるが、他のバンドメンバーは彼を庇った。ブリークには教師で恋人のインディゴ(ジョイ・リー)がいた。彼女との幸せな蜜月の中、突然もう1人の恋人クラーク(シンダ・ウィリアムズ)がやって来る。

 ジャズ・ミュージシャンだった父親、教師だった母親に向けられたスパイク・リーの両親の自伝的な物語は、夢も希望も持った若者たちの青春群像劇に他ならない。圧倒的なトランペットの才能と音楽への愛を持ったブリークには素晴らしい仲間と2人の恋人がいた。当初はクインテットの演奏の素晴らしさを伝えながら、その行く末には最初から記念信号が灯る。ジャイアントの賭け狂いと才能ある仲間シャドウのブリークへの嫉妬である。おまけに音楽を愛する主人公は、2人の女性への愛で引き裂かれる。母親のような母性でブリークを包み込むインディゴに対し、もう1人の彼女クラークはファム・ファタールのような危険さを抱え込む。徐々に足並みを乱し始めるクインテットの野心は、ジャイアントに借金取りの追っ手が迫ったところで頂点を迎える。だが有色人種の『キッズ・リターン』はこんなところでは終わらない。

 ブルックリン橋に佇むブリークの孤独、ジョン・コルトレーンもチャーリー・パーカーも鬼籍に入ったJAZZの刹那、ブリークは息子をマイルスと名付け、壮大な黙示録のバトン・タッチをする。ジョン・コルトレーンの『至上の愛』が奏でる2人の愛の人生、それを断ち切るかのようなエンドロールのGang Starr『A Jazz Thing』の爽快感が胸を締め付ける。
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