YasujiOshiba

殺しが静かにやって来るのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

殺しが静かにやって来る(1968年製作の映画)
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BD(キングレコード)。モリコーネ祭りの続きでもあるけど、3人のセルジョのひとりコルブッチが撮ったカルト・ウエスタンが見たくて見たんだけど、なるほどこれはカルトになるわと納得。雪山で馬が苦しみながら、時にはぶっ倒れるシーンなんて、そこらのセクシーなベッドシーンもぶっ飛ぶほどのエロティシズムじゃございませんか。

それからなんといってもクラウス・キンスキー。あの目、あの口、あの表情。イタリア語版では、ジャンカルロ・マエストリの嫌らしくも見事な吹き替えもよい。悪役はこうでなくちゃと思うんだけど、この映画の悪役はエンドマークを超えてもなお悪役であり続けるのがヤバいところ。

そしてジャン=ルイ・トランティニアンの演じるシレンツィオ Silenzio。「沈黙」という名前のとおり一言のセリフがない。その彼がなぜ「大いなる grande 」という形容詞を与えられるのかは、映像と字幕で知ることになるのだけど、キリスト教的な伝統でいうところのセバスティアーノなどの聖人を思い浮かべればわかりやすい。

そういえば、監督のコルブッチが敬愛するイタリアの映画監督はアレッサンドロ・ブラゼッティだというのだけど、1949年の『ファビオーラ』ではマッシモ・ジロッティが聖セバスティアーノを演じて見事だったのを思い出した。この映画のトランティニアンも、そのジロッティみたいな演技だったよね。

おっと、この映画のもうひとつの主役がモリコーネの音楽。耳になじむシンプルなメロディー。繰り返しの中に不安を煽るような音。インドの素焼きの壺のパーカス(ガタム)なんかに似た音も特徴的。最初は何でもない音楽なんだけど、最後のほうには映像とピタリとハマってきて、ほんと、これぞマカロニウエスタンって感じでしたわ。
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