冬の雪山で展開する「白い西部劇」。主演がなぜかトランティニャン、悪役にクラウス・キンスキーという異色のマカロニ。
土や埃は皆無で、雪と山と血が広がっている。美しい遠景を多用し、雪原を進む馬の姿(疾走感はなく、苦労してノロノロ進む)をたっぷり楽しめるのが魅力。駅馬車に自分の馬も引いてもらって同乗するシーンや、賞金首の遺体の運搬、金の受け取りの手続きといった細かな描写も楽しい。
法制度の及ばない暴力の世界で、着任した保安官や街に住む女たちが、それに抗おうとする。こうしたシーンが印象に残るだけに、ラストの展開は衝撃的。正当防衛という一線を守ってきたサイレンス(トランティニャン)の、最後の決闘の決め手になったものは…。マカロニ特有のギラギラした賞金稼ぎではなく、その対極の目線からこの時代を描いている。75点。