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PASSIONのnetfilmsのレビュー・感想・評価

PASSION(2008年製作の映画)
4.2
 結婚を間近に控えた果歩(河井青葉)と智也(岡本竜汰)を祝う会。誕生パーティも兼ねた旧友たち6人が集うパーティーの席上で、期せずして男の過去の浮気が発覚する。男と女はたどたどしく別れ、それぞれの夜を過ごす。序盤は明らかにジョン・カサヴェテスの『ハズバンズ』を彷彿とさせる。結婚し子供もいる渋川清彦と智也と未だ未婚のまま30代を迎えんとする岡部尚の3人の対比。第一の青春の終わりを大学から社会に出る22歳辺りだとするならば、第二の青春とも呼ぶべきモラトリアムに見切りを付けるのは30しかない。そんなある種の猶予期間を楽しむかのように、3人は旧友の占部房子の部屋に足を踏み入れる。

 当時30歳を迎える前の濱口竜介が監督し、東京藝大の卒業制作として生み出された物語は単なる卒業制作ではなく、既に商業映画のレベルを遥かに超えている。冒頭の夜景こそ光量が足らずに色彩設計もままならない画面構成だが、昼間の河井青葉の教室のシークエンスからは俄然、映画としての強度が増して行く。女たちはいつも凛とし、男たちはその周囲をおめおめと漂うのが濱口映画だとするならば、今作はそれでもまだトリッキーな男3人を女性たちは真正面から受け止めようとする。同世代でも10代の同世代と20代の同世代とではこうも違うのかという様な精神的な男女差が大人になり切れない男たちの悲哀に露わになる。おそらく川崎の工業地帯の煙突をロングショットの背景に据えた画面構成が絶妙で、果歩の肩を抱き寄せる岡部尚の横顔に刻まれた無常感が何よりも滲み、切ない。『偶然と想像』のプロトタイプのような物語と濱口組とも呼ぶべきアンサンブルの妙。
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