このレビューはネタバレを含みます
幼い頃、私は空想の世界が好きだった。うさぎ穴に落ちた女の子、黄色いレンガ道を歩く少女、永遠の少年と冒険するウェンディ。物語の中の彼女たちは、最後には現実に帰ってしまう。それがいつも寂しかった。
「私なら、ずっとあっちの世界にいるのに。」
そんなことを思いながら、私は物語を読み、映画を観た。でも、夢は夢のまま。私は大人になり、空想の世界を諦めた。
そんな時、『パンズ・ラビリンス』に出会った。
迷宮の番人パン、妖精を喰らう化物、どこか冷たく不穏な空気。目を背けたくなるのに、なぜか懐かしかった。オフェリアの空想が本物であってほしいと願いながら、彼女とともに迷宮を歩いた。
好きだった物語の主人公たちは、みな現実に帰ることを選んだ。でも、オフェリアは違った。争いと飢えの絶えない世界で、彼女が生きていけるのは、彼女が信じる空想の世界だけだった。
物語の終わり、赤い血が滴り落ちる瞬間、私の目からも涙がこぼれた。それは悲しみではなく、救いの涙だった。オフェリアは試練を乗り越え、元あるべき場所に帰ったのだと、私はそう信じた。
この映画を観るたびに、私は幼い頃の自分に戻る。うさぎを追いかけ、妖精の粉で空を飛んだあの日に。
空想の世界から戻らなくてもいい。夢から醒めなくてもいい。
——だって、『パンズ・ラビリンスと私』の物語は、今もまだ続いているのだから。