冒頭のワインを手作りで製作する様子をとらえたドキュメンタリーが詩的でその素朴な美しさに見とれてしまったが、前半があまりにも良すぎたのでそのあとのワイン工場でのドラマパートが単調に思えて眠気を催したもののそれでも中盤からの若さゆえに周囲と迎合できず職場の同僚との恋も夢に終わった主人公ニコの青臭い労働ドラマに胸が切なくなった。
職場のヒロインが奔放な性格で、自分の美貌に群がる男どもを天秤にかけつつ付き合っている。そんな彼女を真剣に愛してそのことを告白するために家まで来たのに、彼女にからかわれて何も出来ずに出ていったら彼女が好きな別の男に暴行されるニコが不憫。
職場や恋のストレスから暴走してしまった主人公の結末をぼかして宙ぶらりんになったようなラストが苦い余韻を残す。
主人公のニコがダスティン・ホフマンや八乙女光に似ており、木訥だが真面目な青年像にぴったり。
ニコの職場の上司がことなかれ主義のようで、彼のことをしっかりと見守ってそれとなく忠告してくれる上司がいい人。あとワイン工場という音楽とは関係のない場所なのに社長の息子が教育のためピアノを弾きにきて音楽を奏でるのが素人演奏好きなイオセリアーニ監督らしい。