“そんな役に立たない帽子脱いじゃえよ”
”気分の問題だ”
【ドラえもん語れないマン卒業計画-5】
これはたしか小学校低学年の遠足バスで見た作品のはず。メデューサや魔王が不気味だったし、なかなか絶望的な展開があったので軽く記憶が残っている。
ドラえもんの秘密道具「もしもボックス」によって生み出された、科学ではなく魔法が支配する異世界。そこでさえ、のび太は相変わらず落ちこぼれの烙印を押されてしまう。このただ夢が叶うわけではないシビアで皮肉な設定が物語に深みを与える。
魔王のデザインはどこかディズニーの『ファンタジア』のチェルナボーグを彷彿とさせるが、影響を受けたのだろうか。逆光に縁取られた不気味な輪郭も、幼い自分に印象を残していた。
これまでの4作以上にストーリーが練られていて、伏線がしっかり効いているのがよかった。今作ののび太はいつも通り落ちこぼれではあるが、優しさや咄嗟の機転、パラレルワールドへ気を配る正義感も見せ、そのすばらしい人格が強調されているように思う。これはのび太の力だ。そこまで変わらない少年が、冒険を経て少し一皮剥けてように見せてくれる、それが劇場版らしくて素敵。
今作は、それまでのドラえもん映画4作品を凌ぐ緻密な脚本構成が光る作品だった。丁寧に張り巡らされた伏線が後半で見事に回収される展開は、単なる子供向け映画の域を超えた物語の深みを生み出している。
のび太は、日常世界での落ちこぼれぶりをそのままに描かれながらも、その本質的な優しさ、危機に際しての咄嗟の機転、そして異世界の住人たちにまで及ぶ正義感が際立つ。この作品は、のび太という少年の真の強さを改めて観客に示してくれる。普段は変わらぬ日常を過ごす少年が、非日常の冒険を通じて少しだけ成長し、一皮剥けた姿を見せる瞬間—それこそが「ドラえもん」の劇場版ならではの醍醐味であり、本作最大の魅力だ。
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