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空中庭園のRenkonのレビュー・感想・評価

空中庭園(2005年製作の映画)
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(@早稲田松竹/2015.4.1)

「タブーの無い家族だなんて、窓の無いラブホテルみたいですね」
家族間での秘密をタブーにしながらも、それぞれが裏で秘密を抱える京橋家。
そんな彼らにミーナが投げかけるセリフを聞いて、僕は窓を開けたら一面墓場だった川崎の安ラブホのロケーションを思い出した。

結局この映画が言いたいのは、家族の関係性を真実だけで塗り固めるのは不可能だということだ。
不遇な少女期を過ごした反動があるのだろうが(こういう人は大人になっても不思議と家庭運が無い)、ガーデニングじゃあるまいし"秘密の無い家庭"を創ろうとするなんてそれこそがまやかしだ。
そんな彼女が豪雨の中顔面血まみれで絶叫するシーンはまるで胎児を思わせ、彼女自身の新たな生まれ変わりのように捉えている。

個人的に特に良かったと思った点は、今や団地と呼ばれる様になってしまった「ニュータウン」という舞台描写である。
ちなみに神奈川出身としては、あの観覧車見ただけでロケ地が「センター北」だとすぐわかってしまったのだが(余談だがあの噴水がある広場はめちゃ若い頃酒飲んで初めてぶっ倒れたところだ)
確かにあの港北ニュータウンというエリアは、主婦たちのユートピアのような場所である。
開発された綺麗な街区と、日当たりのいいルーフバルコニー。(固定資産税年間50万くらいしそう)
それなのになぜだかハリボテを見てるような"違和感"が奥底に横たわっており、まるでその空間自体が歪んでいるようなオープニングはこの作品の世界観を確立していてかなりお好みだった。

もう一点褒めたいのはキャラクター性の豊かさだ。
キョンキョンの上塗り感漂う笑み、そして時折見せる深層的な表情(特にコンビニで突然娘に話しかけられた時の顔!)にはゾクっときたし、
板尾創路のチョロっぷり(ソニンに足コキされたい)、大楠道代のいぶし銀とも言える存在感は見ているだけで楽しかった。
個人的には永作博美が黄色いワーゲン乗りながら爆音で流してたのが豊田道倫の「雨のラブホテル」で、もうこれだけで最の高。
ただそんなキャラの立ち度合いがコミカルに働きすぎて(瑛太必要だったか?)「家族物」としての深みはちょっと浅くなってしまったのかなーとも思えた。

それにしても自分が「仕込まれた場所」だなんて、あまり深く考えたことは無かったけど(それにしても「ホテル野猿」は嫌だなぁ)、
今思い返せばあの川崎のラブホは、人間の生と死が窓一枚向こうに存在するという特異質な空間だったんだなぁ。
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