セットみたい
ガラスの街だった
何もかもが眩しくて
何もかもが嘘みたいで
ふたりはそこで
夢を見ようとした
現実を忘れようとした
でも
どこへ行っても
誰といても
心だけは うまく誤魔化せなかった
旅に出たのは
自由になるためだったのに
新しい誰かに出会ったのは
傷を忘れるためだったのに
帰りたくなるのは
いつも同じ場所だった
喧嘩して
飛び出して
遠回りして
それでも思い出すのは
不器用に笑う横顔と
暮れかけのキッチンと
小さな灯りの下の
ありふれた夜
あの夜をなくして
どこへ行けるんだろう
あの声を知らないふりして
誰と眠れるんだろう
最後には気づく
大きな夢も
派手な街も
きらきらした夜も
結局、欲しかったのは
「おかえり」だけだったと