1953年3月今はなきソビエト社会主義共和国連邦の指導者スターリンが死去する。堀田善衛の1951年芥川賞受賞作本を原作に、スターリンの死を被せて映画化したもののようだ。映画産業絶頂期の頃のスピーディな映画化作品。本作が公開されたのが1953年の9月との事なので冒頭のスターリン云々はバタバタしている。実は、朝鮮戦争の特需に沸いている日本の社会をでんぐり返しの視点で描きたいようなのだ。吉田茂自由党政権とか、労働組合運動とか、前年の「サンフランシスコ講和条約」の発効にも拘わらず我々8000万人に独立性なんてあるのか、というような話をしている。今も変わらぬ世界だけれど。あ、今はもはや慣れ切っているか。
国民党と共産党に分断された中国や、謎のオーストリア人の政商の暗躍等も描かれているが詰め込みすぎで消化不良。
監督、主演の佐分利信。ここでは曖昧な役割で、部下に殴られたり大陸的な妻に翻弄されたりしているし、当時でいえば反動的な台詞を言ったりしている。イメージではリベラルな人、という気がしていたが、日本の首領を演じたり、独善的な銀行家を演じたり、正体はよくわからない。
但し、16ミリフィルムを35ミリに焼き直してブルーレイ化したとかいうデジタル作品で、画像は粗く音は割れ、といった体で聞き取れない台詞も多かった。1953年製作公開。原作堀田善衛 。脚本猪俣勝人 。監督佐分利信。シネマヴェーラ渋谷「俳優が監督するとき」の一篇。