Kumonohate

第三の影武者のKumonohateのレビュー・感想・評価

第三の影武者(1963年製作の映画)
4.6
主人公は飛騨のとある戦国大名の影武者(市川雷蔵)にさせられた農家の男(市川雷蔵・二役)。本来の己を捨てて影として生き始めた男が、紆余曲折色々あって、影から脱却し殿様になりすまして一国の主となるが、また紆余曲折色々あって、一国の主になりすます一方で本来の己を一瞬だけ取り戻すものの、またまた紆余曲折色々あって、最後には本来の己としての自分も一国の主としての自分も全て失ってしまうという、アイデンティティ崩壊の物語。

かなり面白い。手塚治虫の「最上殿始末」より黒澤明の「影武者」より面白いかもしれない。

主君が戦で片眼を射抜かれると影武者も片眼を潰されてしまう等といった、ストレスフルなシーン設定が見事。影としてなりすましとして生きる主人公を、唯一、本来の己として愛してくれる女性がいる等といったキャラクター設定が見事。市川雷蔵・金子信雄・高千穂ひづる・万里昌代・天知茂ら、適所に配置された名優たちが、自己を弄ばれた挙げ句に全ての自己を喪失し遂には生ける屍と化す男の物語を盛り上げる。

それにしても、万里昌代にあんな顔して愛されたら、自分なら、天下取りなんてどうでもよくなっちゃうけどな。
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