すずき

ブエノスアイレスのすずきのレビュー・感想・評価

ブエノスアイレス(1997年製作の映画)
3.8
ウィンとファイの香港人ゲイカップルは、アルゼンチン旅行中に破局した。
しかし、ウィンが旅費を使いきり、国へ帰れず2人は現地ブエノスアイレスで働き出す。
一度は別れた2人だったが、ある日怪我をしたウィンがファイの前に現れ、そのまま成り行きでアパートに転がり込む…

脚本の無い監督、ウォン・カーウァイによる、くっ付いては離れ、すれ違う男同士の切ないラブストーリー。
ゲイ役を嫌がったトニー・レオンに偽の脚本を伝え、海外ロケ地で「あの脚本変えたから、君はゲイ役ね」と伝えた監督の鬼畜エピソードが笑える。
それ以外にも、結構ムチャクチャな撮影してたみたいで、この映画の製作ドキュメンタリー映画まで存在する。「地獄の黙示録」みたいだな。

ストーリー展開はというと、とてもキレイに纏まった話、とは言い難い。
これも脚本を用意せず、即興劇スタイルでその日その日の撮影をこなした監督の所為。
むしろ、その製作方法でここまで纏められたのはスゴい。

しかし自分は、多少纏まりがなくても、悪いとは思わない。
それが監督の、ウォン・カーウァイ節とも言うべき個性になってるからだ。
要は作品が面白ければいいのだ!

ブエノスアイレスの派手な色彩の街を、時にはモノクロ、時にはカラーで映し出す映像は幻想的。
汚れた共用キッチンでタンゴを踊る、2人のシーンの美しさたるや!

ゲイ役を嫌がった割には、派手なカラミも演じきったトニー・レオンの役者魂。
相手役のレスリー・チャンも、どちらも演技メチャ上手で、2人ともどうみてもゲイだ。
そんな2人の演技力も相まって、即興劇の筈なのに完成度が異常な作品でした。