つかれぐま

サイコのつかれぐまのレビュー・感想・評価

サイコ(1960年製作の映画)
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【巨匠による超B級映画】

実は初鑑賞(オチは既知)。
スケート風に採点すれば、
技術点90/芸術点10くらいの凄いバランスだなあと。

ヒッチコックは前作『北北西・・』までに大作映画でやりたいことをやりつくしたのだろう。いとしのグレース・ケリーもいないし。ならば(グレース主演では絶対できない)女優の裸をフィーチャーしたB級映画でも作って見るかという、やけくそな勢いで作ってしまった感。

ヒロインは前半で早々に退場する。それはいいとして、前半のストーリーが後半に全然活かされてこない。緻密なサスペンスに見えたあの前半は何だったんだろうか。彼女がモーテルに到着する直前から映画を始めても実は成立してしまう。2つの話を無理やりつなげた、そんな話。これなら前半を端折って90分でまとめていればもっと傑作になっていたのでは?冒頭の情事シーンを見せたかったのだろうか。

『めまい』の主人公同様に本作の主人公ノーマン・ベイツも「愛する人の喪失で狂う」話だ。あくまで私見だが『裏窓』『めまい』『サイコ』は、グレース・ケリーに翻弄されたヒッチコックの内面描写3部作だ。

彼女の魅力に幽閉される『裏窓』
<filmarks.com/movies/13436/reviews/87459026>
突然の喪失に壊れていく『めまい』
<filmarks.com/movies/1149/reviews/90807575>
ついに狂った果ての『サイコ』

皮肉にもこの3作が彼の最高傑作と評価されている。