春とヒコーキ土岡哲朗

サイコの春とヒコーキ土岡哲朗のネタバレレビュー・内容・結末

サイコ(1960年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

心にとにかく「不安定」をもたらされる。

不協和音や、異常者へのイライラによって生じた「心の不安定」を、恐怖に繋げさせられる。
序盤は、金に目が眩んだ女の罪悪感との葛藤。しかし、主人公だったはずの女は前半であっさり死亡。この実験的な構成が面白くて引き込まれた。そこからは、その女を捜索する妹と、女の恋人が登場する。
10年前に死んだはずの人間が生きていると聞いたときの刑事のセリフ、「墓に眠っとるのは誰だ?」。この、人間成り代わりパターンっていうのは、「アイデンティティーの乗っ取り」で怖い。
女装して襲いかかってきた犯人が、女の恋人に後ろから取り押さえられたところは笑ってしまった。犯人は、自分を自分の母親だと思い込んでいる状態でニヤケて、沼から引き上げられる車が映って映画が終わる。不条理な気持ち悪い終わり方。犯人の本来の人格ではない、存在しない人間の語りで終幕していて、異常を堂々と突きつけられた。